過去夢の少女
☆☆☆

母子家庭だけれどちゃんとした料理が食卓に並ぶのは、他の部分であまりお金を使わないからだと薄々感づいてはいた。

お母さんは年中同じような服を着ているし、新しい服を購入してもデザインも色も似たりよったりだ。

それは奇抜な色に挑戦して合わせる服や小物がなくなることを懸念してのことかもしれない。

こんなに一生懸命で、だけど私の前では笑顔を絶やさないお母さんをやっぱり自分が守らないといけないと思う。

「お母さんってさ、過去に戻れるとしたらなにしたい?」
そう質問したのはお風呂上がりでのんびりとテレビを見ているときだった。

「過去に戻れるとしたら? そうねぇ」

お母さんは案外しっかりと考えてくれているようで、右手を頬に当ててしばらく黙り込んでしまった。
テレビでお笑い芸人たちが漫才を繰り広げている。
< 74 / 186 >

この作品をシェア

pagetop