旦那様、お約束通り半年が経ちましたのでお別れさせていただきます!〜呪われた辺境伯に嫁ぎましたが、初恋の騎士様が迎えにきました〜

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「お初にお目にかかります。
エリー・ラングトンと申します。
本日よりお世話になります。」

馬車から降り立つと、気持ちを切り替えてエリーは丁寧に挨拶を述べる。

「お待ちしておりました。こちらへ」

出迎えたのは、一人の家令のみだった。

旦那様どころか、誰の姿も見当たらない。

私は、歓迎されていないのだわ……。
こんな対応はあんまりだわ。
お金で買われたみたいじゃない。



結婚は初めてではないとのことだから、2回目以降は、こういうものなのかしら。

それでも私にとっては、初めてのことなのに。


そういえば、お子様のことは耳にしていないわ。
もしかしたら、何らかの理由でお子様がっできなかったのかしら。
子供ができなかったら、私も離縁されるのかしら……。 もしそうなった時は、お父様は、受け入れてくださるかしら。いいえ、あの家にはもう戻りたくはない。



貴族にとって、政略結婚は珍しくない。
泣き言を言っても、意味のないこと。

嫁いだ家に馴染めずに、心を病む者もいると聞くけれど。


離縁すると、女性は傷物として扱われる。


例え男性側に非があったとしても……。

理不尽だわ。

結婚すると女性は、魔力が安定する。

なので、離縁した女性は、再婚は義務づけられていない。

魔力の暴走を防ぐ為に、若い女性の結婚が優先される。


結婚後の魔力の暴走の事例はない。子供の有無に関わらず。

恐らく、男女の営みが関係するのではないかと私は思っている。

結婚まで処女が美徳とされる貴族とは違い、平民の間では割と自由な恋愛が行われている。 

魔力の強いものは貴族が多く、平民には生活魔法程度も扱えない者が大半だった。

貴族女性は、魔力の暴走を恐れて20歳まで過ごす。

そのため、魔力の安定のために、仕方なく女性を助けてあげている、という奢った考えを持つ貴族男性が多かった。
 
男尊女卑とまでは言わないが、必然的に男性優位となっており、女性にとっては生きづらい世の中だった。

自分の意見を言っただけで、暴力を振るわれる家もあった。女性は従順であれ、という暗黙のルールがまかりとおっていた。


家令と共にエリーは長い廊下を歩いて行く。誰一人すれ違うこともない。
自分も、もしかしたら酷い扱いを受けるのではないか、と不安に押しつぶされそうだった。

物音一つしない静寂な空間が続くので、一層不安感が増す。


人の気配を感じられず、花嫁を迎える晴れやかな雰囲気すら感じられなかった。

まるで、エリーを
拒絶しているようだった。


「失礼します」
「入れ」


邸の主人の部屋に辿り着くと、
一礼して家令は立ち去った。


部屋に取り残されてエリーは戸惑いを隠せない。

緊張しながらも、邸に到着した時と同じく自己紹介の言葉を紡ぐ。

淑女として優雅に見えるように、一連の動作に気を配りドレスの裾を掴み、一礼する。

「お初にお目にかかります。エリー・ラングトンと申します。クリフォード・キャンベル辺境伯様」



「そんなに畏まらなくていい。

君が、次の花嫁か。

なんだ……普通だな。

もっと、こう……肉付きの良い感じが好みなんだが。


まぁ、それでも、問題ない。逆に普通の方が、

名誉ある100番目にピッタリの供物かもしれないな。

あぁ、名前も好きに呼ぶといいさ

どうせ一度きりなんだから。」

「──あの?」

頭を上げて声の主の姿を捜すエリー。
意味不明な言葉を口にだしつつ、ゆっくりと距離を詰めてくる。

エリーはその男性の姿を一目みて、息を呑む。

太陽の光のような輝く金髪、中世的な顔立ち、細身の体躯。まるで時を忘れたように魅入ってしまうような美丈夫だった。

この方が、私の旦那様となる方。キャンベル辺境伯様。

「あぁ、君は気にすることはないよ
じゃあさっそく始めようか」

始める? いったい何を?

会話の内容が、意味不明すぎて理解が追いつかないエリー。

胸騒ぎがして、思わずじりじりと後退りする。

不敵な笑みを浮かべるクリフォード。
エリーを逃がすまいと、一気に詰め寄る。

「‼︎」

エリーは、あっという間に抱きしめられて口を塞がれていた。

驚き、硬直するエリー。
そんなエリーを気遣うこともなく、クリフォードは乱暴に貪るように襲い掛かかる。

引きずるようにベッドへと押し倒され、ドレスの胸元が破かれる。

まるでその瞳は獣のようで、恐怖から声も出せないエリー。

逃げ出そうともがいてはみたものの、軽々と押さえつけられる。

「初夜だからって夜まで待つ必要はないよね? 
どうせ、式もあげないんだし、全て省略だ。」


「いや!待ってください!こんな、こんな……こんな扱いはあんまりですっ!」

「恨むなら差し出した父親を恨むんだな!
貴族の務めは果たさなきゃ、 だろ?」

「いやーーーー!!!」


必死の抵抗も虚しく、エリーの純潔はクリフォードによって無惨に散らされた。






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