ショパンの指先
「そうだ、杏樹にお祝いのプレゼントがあるのよ」
「プレゼント?」
優馬は意味ありげに微笑んで、ジャケットから二枚のチケットを取り出した。
「それは?」
「洵の来日コンサートのチケット」
優馬はチケットを指で挟みながら、得意気に言った。
「え、本物!?」
私は身体を乗り出して、チケットを食い入るように見つめた。洵が来日コンサートをやることはもちろん知っていた。けれど、あまりの人気で発売して30分足らずで売り切れてしまったプラチナチケットは私が入手できるはずもなく諦めていたものだった。
「この一枚は、もちろん私の。もう一枚はあんたにあげる」
私は言葉を発することができずに、ただ茫然とチケットを見つめていた。
「どうしたの? あんまり嬉しそうじゃないわね。あんたのことだから狂喜乱舞して喜ぶと思ったのに」
「……私、行ってもいいのかな?」
「は? なんで?」
「洵に会うなって遠子さんに言われているのに」
「コンサートを見に行くだけよ。見るだけしかできないのだから、会うってことにはならないでしょ」
「そうだけど……」
歯切れの悪い私に、優馬は大きなため息を吐いて、チケットを一枚カウンターに置いた。
「なんか思う所があるなら、来なくてもいいわよ。最後はあなたが決断しなさい」
私は揺れる心で、じっとコンサートチケットを見つめ続けた。
「プレゼント?」
優馬は意味ありげに微笑んで、ジャケットから二枚のチケットを取り出した。
「それは?」
「洵の来日コンサートのチケット」
優馬はチケットを指で挟みながら、得意気に言った。
「え、本物!?」
私は身体を乗り出して、チケットを食い入るように見つめた。洵が来日コンサートをやることはもちろん知っていた。けれど、あまりの人気で発売して30分足らずで売り切れてしまったプラチナチケットは私が入手できるはずもなく諦めていたものだった。
「この一枚は、もちろん私の。もう一枚はあんたにあげる」
私は言葉を発することができずに、ただ茫然とチケットを見つめていた。
「どうしたの? あんまり嬉しそうじゃないわね。あんたのことだから狂喜乱舞して喜ぶと思ったのに」
「……私、行ってもいいのかな?」
「は? なんで?」
「洵に会うなって遠子さんに言われているのに」
「コンサートを見に行くだけよ。見るだけしかできないのだから、会うってことにはならないでしょ」
「そうだけど……」
歯切れの悪い私に、優馬は大きなため息を吐いて、チケットを一枚カウンターに置いた。
「なんか思う所があるなら、来なくてもいいわよ。最後はあなたが決断しなさい」
私は揺れる心で、じっとコンサートチケットを見つめ続けた。