ショパンの指先
私は河川敷を歩きながら一人ため息を漏らした。せっかくの休みなのに気分は晴れない。
私はまだ、洵のコンサートに行くか行かないか迷っていた。行きたい気持ちはもちろんある。遠くからでもいい、洵をこの目に写したい。私は恐らくもう、恋愛はできないのではないかと思う。
優馬が言うように、誰にも未来は分からないから断定はできないけれど、誰かに魅かれ、好きになることなど今の私には想像できなかった。いまだに私の中にはしっかり洵が居座っていて、ときめくのも思い出すのも、私の心は色褪せることなく洵を想い続けている。
もしも今後、私に恋人ができるとしたら、それはとても穏やかで一緒にいると落ち着くような洵とは正反対の男の人だろう。本能が惹かれあうのではなく、理性が彼を求めるような大人の付き合いをすることだろう。それもいいかもしれない。一生一人は、やっぱり寂しいから。
でも、どんなに相手がいい人でも。人格者で私には勿体ないほど素晴らしい人であっても。彼と一緒にいると穏やかな気持ちになって幸せを感じられたとしても。それでも私の心の奥底には、洵が居続けるのだと思う。
それは恋とか愛とか、そういうものではない。どんなに時間が経ったとしても、こんなにも深く愛し求めた相手のことは忘れることはできない。私の心と身体に、しっかりと洵は刻み込まれてしまったのだから。
だからこそ……。だからこそ、洵に会うのが怖い。
ただ遠くから見ていることしかできないことは分かっている。そんなの、テレビや雑誌で洵を見ることと大して変わらないことも分かっている。
大勢の中で洵が私を見つけてくれることなんて奇跡に近いし、仮に見つけてくれたとしてもどうしたらいいか分からない。逃げ出してしまうかもしれない。
私はまだ、洵のコンサートに行くか行かないか迷っていた。行きたい気持ちはもちろんある。遠くからでもいい、洵をこの目に写したい。私は恐らくもう、恋愛はできないのではないかと思う。
優馬が言うように、誰にも未来は分からないから断定はできないけれど、誰かに魅かれ、好きになることなど今の私には想像できなかった。いまだに私の中にはしっかり洵が居座っていて、ときめくのも思い出すのも、私の心は色褪せることなく洵を想い続けている。
もしも今後、私に恋人ができるとしたら、それはとても穏やかで一緒にいると落ち着くような洵とは正反対の男の人だろう。本能が惹かれあうのではなく、理性が彼を求めるような大人の付き合いをすることだろう。それもいいかもしれない。一生一人は、やっぱり寂しいから。
でも、どんなに相手がいい人でも。人格者で私には勿体ないほど素晴らしい人であっても。彼と一緒にいると穏やかな気持ちになって幸せを感じられたとしても。それでも私の心の奥底には、洵が居続けるのだと思う。
それは恋とか愛とか、そういうものではない。どんなに時間が経ったとしても、こんなにも深く愛し求めた相手のことは忘れることはできない。私の心と身体に、しっかりと洵は刻み込まれてしまったのだから。
だからこそ……。だからこそ、洵に会うのが怖い。
ただ遠くから見ていることしかできないことは分かっている。そんなの、テレビや雑誌で洵を見ることと大して変わらないことも分かっている。
大勢の中で洵が私を見つけてくれることなんて奇跡に近いし、仮に見つけてくれたとしてもどうしたらいいか分からない。逃げ出してしまうかもしれない。