クールなイケメン御曹司が私だけに優しい理由~隣人は「溺愛」という「愛」を教えてくれる~
これが、「普通」の桐生さん――拓弥さんなのだろうか?
だとしたら、この人は本当に優しい人なんだろう。


桐生グループが抱えるグループ企業の数や収益は計り知れない。その御曹司としての重圧は、きっと拓弥さんの人間性を変えてしまいかねないほど巨大なんだ。


だけど、良かった。
こうしてこの人は本来の人間性――優しさ、思いやり、気遣いをちゃんと失くさずに残していた。
オフィスでの桐生課長は、別の人格を演じることで、自分自身が壊れないように守っていたんだ。


「じゃあ、本当に遠慮なく拓弥……さんと呼ばせていただきます」


「もちろん。これからもお隣さんとして仲良くして。詩穂ちゃん」


これが「顔から火が出る」という状況かと、身を持って知った。


「は、はい、こちらこそ。よろしくお願いします」
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