クールなイケメン御曹司が私だけに優しい理由~隣人は「溺愛」という「愛」を教えてくれる~
全く見た目の釣り合わない私と桐生さん。誰が見ても恋人同士なんかに見えるはずがない。


「ほんと? じゃあ、私、桐生さんの彼氏に立候補しちゃう!」


「じゃあ私も」


真穂に続いてお母さんまで手を挙げた。


「2人とも何言ってるの? お母さんにはお父さんがいるし、真穂も結婚して子どもだっているでしょ」


「冷たいこと言わないの。いいじゃない、少しくらい夢を見させてくれたって。こんなに素敵な人にはこの先二度と出会えないんだから」


お母さんは、拓弥さんに向けて両手を合わせて祈りだした。


「詩穂さんのお母さん、お名前をお聞きしてもよろしいでしょうか?」


「浅子(あさこ)です!」


目を輝かせながら、拓弥さんの質問に食い込むほどの速さで答えるお母さん。
お父さんひとすじの優しくて明るいお母さんは、私の自慢の母親だ。でも、今は乙女の顔になっていて、こんな一面もあったんだとちょっと可愛く思えた。
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