クールなイケメン御曹司が私だけに優しい理由～隣人は「溺愛」という「愛」を教えてくれる～

そうだ、私は「ただの部下」。
それなのに、桐生さんの言葉ひとつひとつに一喜一憂してしまう自分が情けない。


「とにかく。詩穂のことを大事だなんて……何だかすごく嬉しいわ。桐生さん、本当にありがとうございます。どうぞよろしくお願いします」


「はい、浅子さん。詩穂さんのことは私にお任せ下さい」


「き、桐生課長は『仕事』の上で私を大事だと言ってくれてるんだからね。本当に勘違いしないでね」


拓弥さんはまだ微笑んでいる。
会社での顔とは全く違う穏やかな表情に安堵の気持ちはあるけれど、かなり騒がしくしたことは後でちゃんと謝ろうと思った。


「桐生課長、そろそろ帰りましょう」


「え～！ もう帰るの？ ご飯食べていけばいいのに～」


「そうよ、真穂の言う通り。食べていってくださいよ。もうすぐ真穂の旦那さんと孫も帰ってくるんで」