【受賞】ブルーガーネットな恋 ~エリート上司は激愛を隠して部下に近づく~
 ケースの紛失の原因を柚花だと思っていなさそうな様子に舌打ちしたい気分だった。柚花の管理不足、それで充分なのに、どうして犯人捜しなんてするのか。
「そういえば、君に関する噂を聞いたよ」
 話が変わったので、萌美はまた耳をそばだてた。

「はい」
「先日、お店で抱き合ったとか。モテモテだな」
 からかい半分、嫌味半分という口調だった。

「ああ、それはですね……」
 京吾は冷静に説明する。が、扉越しのせいかあまりよく聞こえない。

 だが。

「……婚約者なんです」
 その言葉に、萌美は目を見開いた。
 あの美人なら京吾にピッタリだと思うと当時に、恋人なんてやっぱり嘘だったんだ、と思う。

 婚約までしているとなると、奪うのは難しいだろうか。
 だが、あの生意気な女――柚花の鼻をへし折るくらいはできそうだ。

 様子からして、柚花が京吾にひかれているようなのはわかっていた。
 仕事でもミス、プライベートでも、となればあの女は辞めてしまうだろう。

 京吾にはそのあとでじっくり時間をかけて近づこう。ちょっと時間はかかるかもしれないが、彼にはそれだけの価値がある。
 萌美はほくそ笑み、静かにその場から立ち去った。

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