【受賞】ブルーガーネットな恋 ~エリート上司は激愛を隠して部下に近づく~
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翌日の日曜日、柚花は遅番だった。店に立つと同時に萌美がそっと寄って来る。
「あんなミスをしたのに、よく来れますね」
彼女の嫌味に、柚花は顔を歪めてうつむいた。
「迷惑をかけてごめんなさい」
「ほんと、迷惑でしたよ。お客様に謝らなくちゃいけなくて。私は悪くないのに。責任とって辞めたほうがいいんじゃないんですか?」
柚花にだけ聞こえる声で、萌美は言う。
柚花は反論もできず、ただ謝った。
この日はさんざんだった。
若い女性を連れた年配の男性が現れ、柚花が接客していたときだった。
「私、これがいい!」
シンプルなデザインの五十万円のダイヤを選び、女が言う。先週、彼女は同じデザインを別の男に買わせていた。同じものをプレゼントさせて一つは売ってしまうのだろうとは思ったが、そんなことを客に言えるわけがない。
「そんな地味なのがいいのか? こっちの派手なほうがお前に似合うだろ」
男が示したのは派手なわりに値段が安い五万円の指輪だった。ダイヤの質が違うので、大きさや派手さのわりには高くはない。