眠りの令嬢と筆頭魔術師の一途な執着愛
 もはやイライザの言葉はイヴたち末裔にとって絡みついて解けない呪いのようなものだ。それを、自分の代で断ち切ろうとしている。一族としての生き方ではなく、自分は自分として生きたいのだと言った時の真っ直ぐな瞳は、嘘偽りのない瞳だった。

 エルヴィン殿下もイヴのような人間だったなら、もしかしたらわかりあうことができたかもしれない。きちんと話をして、時に笑い合い、共に寄り添い歩んでいくことができたかもしれない。エルヴィン殿下とイヴは瓜二つゆえに、どうしてもそう思ってしまう。

(考えても仕方のないことだわ。イヴはエルヴィン殿下ではないのだもの)

 イヴは「自分」として生きたいのだと言っていた。そのイヴにエルヴィン殿下を重ねるのはイヴに失礼すぎる。ローラは瞳を閉じて深呼吸をする。

(私は、ヴェルデ様とこの国で生きていくと決めたのだから。今の私は、もう百年前の私とは違う)

 顔を上げてしっかりと前を向いたローラの瞳は、月明かりの光に照らされてキラキラと輝いていた。

 コンコン

 ノック音にハッとしてローラはドアを見つめる。

「ローラ、入ってもいいかな?」


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