眠りの令嬢と筆頭魔術師の一途な執着愛
 ローラはエルヴィンの言葉に呆然とする。百年前も身勝手で傲慢で自分のことしか考えないような王子だった。ローラを平気で殺そうとしたこの男は、王位継承が相応しくないと判断されて断罪されたのに、死んでも反省するどころか変わらずに身勝手で傲慢なままだ。

「イヴには長く付き合っている大切な女がいるんだとよ。イヴが死んだらその女はどう思うだろうなぁ?イヴが死んでその女が悲しむことがあれば、それはローラ、あんたのせいだ」

 イヴの兄がそう言ってへらりと笑った。

(イヴにそんな人が……!)

 イヴは兄たちのとは違ってちゃんと自分自身を生きている、大切に思う人がいても当然なのだ。そんな人なら尚更、ちゃんと生きて国に帰さなければいけないのに。

 ローラはさらに目を大きく見開いてエルヴィンを見つめる。エルヴィンのことだ、ローラが行かなければ平気でイヴを殺すだろう。

「貴様ら!どこまでクズなんだ!!」

 ヴェルデが怒鳴るとクローが笑みを浮かべたまま肩をすくめた。

「そんなに刺激して大丈夫ですか?イヴの首が吹っ飛んでしまいますよ」

 クローの言葉に連動するようにエルヴィンは首にあてた剣に少し力を入れる。するとエルヴィンが憑依しているイヴの首から一筋の血が流れた。

「やめてください!」

 ローラの悲鳴のような声が響き渡る。

「嫌ならさっさとこっちに来い。お前は俺の手で殺してやる」

 エルヴィンの言葉にローラは両目をぎゅっと瞑る。迷っている暇はない。自分にできることは一つしかないのだ。

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