眠りの令嬢と筆頭魔術師の一途な執着愛
 そんなイヴだからこそ、国にいる大切な人と末永く幸せに暮らしてほしいと、ローラは心の底から思う。

「それじゃ、ヴェルデ。また」

  クレイがそう言って微笑むと、クレイとクロー、イヴの兄たち、そしてイヴの足元に魔法陣が浮かび上がる。そして魔法陣の光に包まれて、クレイたちは消えた。

「俺たちも帰ろう」

 ヴェルデはローラの腰に手を回して、グッと引き寄せる。その手は、まるでもう二度と離さないと言わんばかりの力強さだ。フェインがそれを見て苦笑していると、三人の足元に魔法陣の光が浮かんで、三人は消えた。




 光が消えていつの間にかヴェルデの部屋に戻ってきていた。部屋にはヴェルデとローラの二人だけで、フェインの姿はない。フェインの姿がないことに気づいたローラが周囲をキョロキョロと見渡すと、ヴェルデが静かに言葉を発する。

「あいつはあいつの家に転移したよ。今日はもう帰ってゆっくりした方がいい」

 ヴェルデはそう言って、すぐにローラを抱きしめた。

(え、え?急に一体、どうして?)

 突然のことに驚いてローラは身を捩るが、ヴェルデのローラを抱きしめる力は増すばかりだ。

「ヴェルデ様?」


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