ワケありニートな年下ワンコを飼いました
 武内くんは鼻歌まじりに、ウイスキーを注いでいる。そしてボトルを私の前へ置き、ふたつのグラスを持ってカウンターを出た。

「お隣、失礼しますね。立ち仕事は慣れていないから、足が痛くて」

 そう言ってグラスを置きながら、私の隣に腰かける。

「閉店作業は、もういいの?」
「はい。在庫チェックとか締め作業は、もう終わっていたので」
「でも、このボトルは……」
「これは涼介さんの奢りです。ボトル1本、丸ごとね。プロジェクト成功のお祝いだそうですよ。僕も少しだけ、貰っちゃいましたけど」

 そう言って、武内くんがグラスを眼前に掲げる。あ、乾杯しようってことかな。自分のグラスを軽く合わせると、彼は満足そうに頷いた。

 7歳も下の男の子と飲むなんて、初めてだわ。今回のプロジェクトチームの最年少は、確か25歳だったし。なんだか新鮮な感じ。

「彩女さんって、呼んでもいいですか?」
「ええ、もちろん」
「僕のことは、ガクでいいですよ」
「ガクくん、ね」
「それ、言いにくくないですか? 呼び捨てでいいのに」

 不満そうに、少し口を尖らせる。成人男性でこんな表情が似合う人は、なかなかいない気がする。なんだか耳としっぽが見えそう。
< 10 / 278 >

この作品をシェア

pagetop