ワケありニートな年下ワンコを飼いました
「そもそも結婚って、なんの意味があるんだろ」
「え?」
「あ、これとかよくないですか?」

 待って待って。聞き捨てならないつぶやきなんだけど。どうしてそんなに、冷たい言い方をするの?
 
 だけどガクくんはもう、重箱のほうへ意識が向いてしまった。こうなるとダメなのよね。この話は終わり、という合図だから。

「うーん。少し大きくない? 三段だし」

 ツッコミを入れるのを諦めて、ガクくんが差し出した重箱を手に取った。波佐見焼のもので、シンプルな梅の柄が素敵。

「大は小を兼ねますから。あ、これ食洗機とレンチンに対応していますよ」

 相変わらず、料理絡みのことになると目が輝く。さっきの冷たい言葉が嘘のようだわ。

 家族に対して、少し複雑な感情を持っている。ガクくんについて、マスターがそう言っていたことを思い出す。

 結婚に対して冷めた言い方をするのも、家族が関係しているんだろうな。詮索はできないけれど。

「あ~楽しみだなぁ、おせちを作るの」

 購入した重箱を大事に抱きかかえて、ガクくんは跳ねるように歩いている。重箱を買ってこんなに喜ぶなんて、なかなか変わった子よね。

「本当に、ひとりで全部作るの? 私もなにか手伝ったほうが」
「でも彩女さん、目玉焼きすら焦がすじゃないですか。殻だらけだし」

 ……グサッとくる。さすがガクくんだわ。
 朝食の目玉焼きくらいは作らないと……と思ってこの間チャレンジしたら、見事に大失敗しちゃったのよね……。
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