ワケありニートな年下ワンコを飼いました
 自分を理解して、受け入れてくれる人がいる。その幸せを感じながら、ふと井上さんのことを思った。

 付き合っている彼は、彼女の生き方や価値観を理解してくれるのかな。井上さんは否定されるのを恐れていたけれど、もしそこを受け入れてもらえないのなら、人生をともに歩むのは難しいと思う。

 彼を好きだという気持ちと切り離して考えるのは、至難の業かもしれない。でも結婚って、ただ付き合うのとはまったく違うと聞くから、どうか冷静に考えてほしいな。

 そう思っていたけれど、結局私が休暇に入るまで、井上さんの結論は出なかった。彼に話そうとしても、なかなかタイミングが掴めないみたい。

「年末年始は話す時間が取れそうなので、必ず彼に自分の気持ちを伝えます。上條さんとお話して、やっぱりキャリアも諦めたくないと思えたんです」

 井上さんは、真っすぐな瞳で言った。
 よかった。どうやら、意思は固まったようね。

 ロスオフィスからは歓迎のメールが届いていたし、あとは彼女次第。結果がどうであっても、井上さんなら必ず前に進めるはずだわ。

「……まぁ、なるようにしかならないですよねー」

 休暇初日の土曜日。ガクくんとおせち用の重箱を買いに行ったとき、井上さんの話になった。

「そこが折り合わなかったら、結婚なんてしないほうがいいでしょうしねぇ」
「そうね……」

 気のせいかしら。「結婚なんて」という言葉に、なんとなくトゲを感じる。
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