ワケありニートな年下ワンコを飼いました
「とりあえず、食事が済んだら連絡するわね」
「はーい。あ、でも僕のことは気にせず、ゆっくり話してきてくださいね」

 ガクくんは、そういうひと言も忘れない。
 やっぱり料理が得意な人って、気配りも上手だと思う。そしてよく気がつくし思いやりがあるし、飲食業にはピッタリ。だけどきっと、彼がやりたいことは、ほかにあるのよね。

 もう少しだけ踏み込みたい。でも、どこまで許されるのか分からない。

 だからいまは、ガクくんから話してくれるのを待つ。話してくれないのなら、私は知る必要がないということ。そう思うようにした。
 
 そして翌日。
 出社している井上さんに合わせて、会社近くのお店でランチをすることにした。

「上條さん、お休みのところ、すみません」
「いいのよ。連絡をくれて、ありがとう」

 なんだか、とてもスッキリした顔。どうやら、もう前を向いているみたいね。

「実は……彼と、お別れしたんです」

 食事を注文したあと、井上さんはなんの迷いもない表情で言った。

 仕事を辞めるか続けるかじゃなくて、そっちの選択肢を選んだのね。その可能性も頭にあったから、特に驚きはない。

「共働きはいいけど、フルタイムはやめてほしいと彼に言われて。そうしないと、家事が大変だろうからって」
「家事は基本的に、井上さんに任せたいということ?」
 
 井上さんは、下唇を軽く噛んで頷いた。
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