ワケありニートな年下ワンコを飼いました
「私は、お互いしっかり働いたうえで、家事を分担したかったんですけど」
「彼は、それを嫌がったの?」
「最初は、自分は家事が得意じゃないから~なんて、いろいろ言い訳をしていました。でも最後の最後で、本音が出たんです」

 そこまで言うと、井上さんはお冷をグイッと飲んだ。……なんだか、怒りのオーラを感じるわ。
 力強くグラスを置いてひと息つくと、井上さんは少し低い声で言った。

「私の年収のほうが高いこと。結局それが、彼の癇に障っていたんですよ」

 あぁ……そういうことね。
 うちの会社は仕事が難しいぶん、報酬も高い。しかも外資系だから、成果を上げれば年齢に関係なくインセンティブが加算されて、年収が跳ね上がる。

 井上さんは若いけれど優秀だから、これまでたくさん結果を出してきたものね。周りの同年代と比べたら、かなり年収が高いほうだと思う。

 彼がどこにお勤めなのかは分からないけれど、もしかして、普段から彼女との年収格差を感じていたのかしら。

「いざ結婚となると、自分より妻の年収のほうがはるかに高いなんて、嫌だったんでしょうね。ポロッと出たんです。まだ俺より稼ぎたいの? って」

 思わずポカンとしてしまった。
 結婚が絡むと、()というか本性が出ると聞くけれど。年収は彼女の頑張りが反映されたものなのに、それを否定するようなことを言うなんて。
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