ワケありニートな年下ワンコを飼いました
「大丈夫?」
「てて、手すりを離せないんですけど!」

 自分がやろうと言い出したのに、涙目になっているし。
 ガクくんって、変に強がったり格好つけたりしないのよね。背伸びせず自然体なところが、彼の魅力だと思う。だから私も、そのままの自分でいられる。

「彩女さん、久しぶりと言うわりには、めちゃくちゃスムーズじゃないですか」
「そうね。結構体が覚えていたみたいで、スイスイ滑れそう」
「うぇーん、ずるいー!」

 手すりにしがみついて、ガクくんはへっぴり腰になっている。
 うーん、姿勢が悪いわね。これじゃ、いつまで経っても動けないわ。

「ガクくん。まず、真っすぐ立つ練習をしましょう。掴まったままでいいから、両方のかかとをつけて、つま先を90度くらい開いてみて」
「か、かかと……」

 横について、ガクくんの背中に手を添える。

「大丈夫だから。ほら、背筋を伸ばして」
「は、はいぃ」

 声がうわずっている。すごく情けない姿なのに、どうしてこんなにかわいく見えるんだろう。

「そうそう。まずその状態でふらつかないように、バランスを取ってね」
「あ、あ、ちょっとでも動かすと、すっ転びそう……」
「大丈夫よ。私がいるでしょう?」

 それからしばらく、つきっきりでガクくんのレッスンをした。
 なんだかんだ言いながらも、彼は要領がいい。すぐに体の動かし方を覚えて、手すりに掴まらなくても立てるようになった。
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