ワケありニートな年下ワンコを飼いました
「絶対に離さないって、約束したじゃないですかぁ!」
「だけど、ずっとこの状態で滑っても……」
「片手、片手だけでもいいので! しっかり握っておいてくださいっ!」

 涙目で必死に懇願される。見る限り、大丈夫そうなんだけどな。

 結局、右手は手すり、左手は私とつなぐという形に。その状態で壁沿いを滑ってみると、ガクくんの姿勢が少しずつよくなってきた。

「大丈夫そうなら、手すりを離してみてね」
「手すりは離しても、彩女さんの手は離しませんから」

 頑なだわ……でも、かわいいから許してしまう。それに手袋越しであっても、ガクくんと手をつなぐのは嬉しいから。

 彼のスピードに合わせて、ゆっくりゆっくり足を動かす。少しずつ恐怖心が薄れてきたのか、ガクくんの動きも柔らかくなっている。

「もう少し、速く滑ってみない?」

 そう言って、返事を聞く前にスピードを上げてみた。

「あ、あ、あ、彩女さん、ゆっくり~!」
「大丈夫よ。滑れているじゃない」
「ととと止まれないですって!」

 あ、そういえば、止まり方を教えていなかったわ。この状態で教えられるかしら。

 とりあえず並んでリンクの端をぐるりと1周したあと、止まり方を教えるため、手をつないだままガクくんの前に回り込んだ。
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