ワケありニートな年下ワンコを飼いました
「これを食べて、午後も頑張ってくださいね」

 差し出されたランチバッグを受け取る。今日も、私の健康を考えて一生懸命作ってくれたんだろうな。
 お礼にガクくんが好きなお菓子を買って帰ろう……と思ったけれど、お店の閉店時間に間に合う気がしない。あとで少しだけ抜けて、買いに行こうかな。

「ガクくんの用事は、いまから?」
「はい、もう行かなくちゃ。彩女さんは、今日も遅くなりそうですか?」
「そうね、また終電になっちゃうかも」
「分かりましたぁ」

 プロジェクト期間中は、ほぼ毎日終電。だから以前は、お風呂へ入って寝るだけだった。
 でもいまは、ガクくんが胃に優しい食事を作って待ってくれている。どれだけ遅くなっても、必ず起きていた。

 ちゃんと「おかえりなさい」が言いたい。先に寝ていていいと伝えたら、こんな言葉が返ってきた。
 そのときのガクくんはどこか寂しそうな表情をしていたから、それ以上なにも言えなくて。家族の帰りを持つことは彼にとって特別な意味があるのかもしれないと、またいろいろ考えてしまった。

「それじゃ、行きますね。ゆっくり味わってくださーい」
「うん、ありがとう」

 ガクくんは子どものようにブンブンと両手を振りながら、小走りで去っていった。
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