ワケありニートな年下ワンコを飼いました
 それでもやっぱり、気にはなる。どうしてガクくんが、家を出ようと思ったのか。

 就職するまで帰ってくるなと言われて、追い出された。そう言っていたけれど、彼には就職する気がなさそうだし、帰る意思がないのも明白。
 このままでいいとは思わないけれど、私も親とコミュニケーションがとれていないから、偉そうに言えないし。なかなか難しい。

「そうだ、彩女さん。これをガクに渡しておいてくれませんか?」

 マスターが、奥からA4サイズの茶封筒を持ってきた。

「兄から送られてきたんです。ガク宛の郵便物らしくて。本人に渡すより、彩女さんに持って帰ってもらうほうが確実かなと。使ってしまって申し訳ないんですけど」
「とんでもない、お安い御用です」

 確かに、マスターからガクくんに直接渡しても、素直に受け取らないような気がする。折を見て、私からちゃんと渡さなくちゃ。

「ガクがここで働いていることは、伝えてあるんですけど。兄も頑固というか融通が利かないので、ガクの様子を尋ねもしないんですよ」
「難しいですね、親子間って」
「まったくです。いまから不安ですよ、僕は」

 ふたりで苦笑する。
 間もなく父親になるマスターにとって、親子というワードは特に気になるみたい。親子や家族って模範解答がないから、みんな手探りなんだろうけれど。
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