ワケありニートな年下ワンコを飼いました
「大学2年のときに出版社の恋愛小説コンテストで受賞して、商業デビューしたんです。まぁ、専業作家としてやっていけるほど稼げていないんですけど。だから父親にも反対されていて」
「それで、家を追い出されたの?」
「はい。世の中を甘く見るなと言われました」

 そういえば、以前仕事で関わった出版業界の人から聞いたことがある。
 たとえコンテストで受賞してデビューできたとしても、売上によっては続編を出せず打ち切りになってしまう。本を1冊出すよりも、出し続けることのほうが難しいのだと。

 だけどせっかく才能があるんだから、それを活かさないのももったいないわよね。

「僕は別に、なにがなんでも、小説の執筆だけをして生きていきたいわけじゃないんですよ」

 ガクくんがティーカップを手に取ったので、つられて私もハーブティーをひと口飲んだ。甘酸っぱいローズヒップが、体の中に気持ちよく流れ込んでいくのを感じる。

「最初は悩みました。みんなと同じように就職するか。だけど小説を書く余裕がなくなりそうだから、アルバイトとか派遣とかで働きながら、執筆を続けようと思ったんです」

 ガクくんは落ち着いた様子で、俯きながらポツポツと話している。だけど少し不安そうに見えるのは、私がどういう反応をするのか気になるからなのかな。
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