ワケありニートな年下ワンコを飼いました
 彼が小説を書き続けるために、就職を拒んでいたということは分かった。そして、それを父親に反対されていることも。

 だけど私には、まだ気になることがある。
 ガクくんと同居することになったあの日、マスターが言った言葉。家族に対して、少し複雑な感情を持っているということ。

 これまでの口ぶりからして、マスターはきっと、ガクくんが小説を書いていることを知らない。だとしたらあの言葉は、親子の不和の原因がほかにあることを示しているような気がして……。

「訊きたいことがあるんだけど、いい?」

 ガクくんの両手を握って、顔を見つめる。やっぱり澄んでいて、とても真っすぐな瞳だと思った。

「はい。彩女さんには隠しごとはしたくないので、ちゃんと答えますよ」
「ううん。言いたくなかったら、正直にそう言ってほしい。無理に言わせるのはわだかまりのもとだし、すべてを包み隠さず話すことが、必ずしもいい結果を生むとは限らないでしょう?」

 なんでも時機というものがある。それがいつなのか他人には分からないことだから、彼のベストタイミングで話してほしかった。
 
「恋人同士であっても、言いたくないことはあると思う。そういうことも含めて、きちんと話せる関係でいたいの」
「そっか……そうですよね。さすが彩女さん」

 ガクくんは何度か頷いたあと、笑顔を見せた。
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