ワケありニートな年下ワンコを飼いました
「ただ、一度会って話してみたいかな」
「そうね。一緒に暮らしているのなら、ご挨拶はしておかないと」
「あ、うん、それはもちろん。今日も一緒に行こうかって言ってくれたんだけど、まずは私がきちんと話してからと思ったの」

 同棲している彼氏をいきなり連れて帰るなんて、さすがにハードルが高すぎた。
 だけどガクくんは、いつでも挨拶に行くと言ってくれている。一切逡巡する様子もなくて、それがとても嬉しかった。

「近いうちに、また帰ってくるから……そのときに、会ってくれる?」
「もちろん。楽しみにしているって、彼に伝えておいてね」

 ウキウキする母の横で、父が静かに頷く。
 よかった。自分の将来のこと、ガクくんのこと、全部クリアにできた。

 済んでみれば、簡単なこと。だけど私にとっては、アリ地獄から抜け出すくらい大変なことだった。はじめの一歩を踏み出すのが、とてもとても怖くて。
 結局私は、自分を否定されるのが嫌だっただけ。いろいろな言い訳をして目を背けていたのが、馬鹿みたい。

 その夜は久しぶりに両親と夕食を食べて、実家に泊まった。
 本当はすぐ帰るつもりだったけれど、翌日は日曜日だし。それに、自分は仕事があるからゆっくりしてきたらと、ガクくんが言ってくれた。
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