ワケありニートな年下ワンコを飼いました
「とっても美味しいマドレーヌを、ありがとうございます。これ、きび砂糖とか使っているんですか? ……あ、やっぱりー! 自然な甘さがいいですよねぇ」

 ……さすがのコミュ力。交際相手の親と会話するのって、普通はもっと緊張するものじゃないの?
 やっぱりガクくんって、接客業に向いているんだろうな。MISTEROでも、いろいろなお客様に対して堂々と接しているものね。

「本当ですか? はい、ぜひぜひー! ……あ、彩女さんのお父さんですか? 初めまして、武内雅空と申します」

 え、え、ちょっと待って。父とも話しているの?

「いえいえ、とんでもないです! こちらこそ、ご挨拶できないまま……はい、はい。また改めて伺いますので。はい、よろしくお願いします!」

 普通に会話しているし。声だけ聴くと、父は結構迫力があるんだけどな。本当に恐ろしい子ね。
 短く言葉を交わしたあと、ガクくんがスマホを手渡してきた。

「好青年じゃないか」

 珍しく声が弾んでいる。この父を即陥落させるなんて。ガクくん、侮りがたし。

「近いうち、一緒に帰ってきなさい。お母さんも喜んでいるから」
「うん、ありがとう」
「マドレーヌのレシピ、LINEで彩女に送るってガクくんに言っておいてー!」

 お母さんの声も飛んできた。
 両親とも一瞬でガクくんに心を掴まれるなんて、やっぱり血は争えないのかもしれない。
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