ワケありニートな年下ワンコを飼いました
 暗黙の了解のように、どちらからともなく唇を重ねた。今度は小鳥がついばむようなバードキス。何度も何度も、繰り返す。ガクくんらしい愛情表現だと思う。

 出会ってから数えきれないほど体を重ねているのに、恋人としては初めてだなんて。考えたらおかしいけれど、順番なんて関係ない。大切なのは、どういうふうに絆を深めていくのか。

 慣れた手つきで、ガクくんが私のルームウェアを脱がせていく。こういうところは、初めからスムーズだったのよね。

「……どうしたんですか?」

 思わず笑みがこぼれた私に、ガクくんが怪訝そうな視線を向ける。

「初めて会ったころのガクくんを、思い出しちゃって」
「えー? なんですか、それ。少しは上手くなったってことですか?」
「ここまでは、最初から手慣れていたなぁって」
「ここまではって……結構言いますよねぇ、彩女さん」

 ふたりで、くすくす笑い合った。

 子どもは欲しくないのに、セックスをする意味ってなんだろう。そう考えていた時期もある。愛情を確かめる行為だと言うけれど、そんなふうに感じたことが少なかったから。

 私はきっと、恋愛と正面から向き合ったことがなかったんだと思う。振り返ってみれば、これまでの恋人に対する感情は、尊敬が一番大きかった。
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