ワケありニートな年下ワンコを飼いました
「もっと、声、聞かせてください」

 息を切らしながら、ガクくんが言う。
 彼の前では、どんな自分でも見せられる。ずぼらで不器用でポンコツなところも、はしたなく乱れている姿も、全部。

 こんな私でも、大好きだと言ってくれる。だから私も、ありったけの愛情を注ぎたい。

 ガクくんの紅潮した頬に触れた。
 いつもクルクルと変わる彼の表情は、ふとした瞬間、不安げになるときがある。

 きっと、置き去りにされることを恐れているのだと思う。母親のこと、4年付き合っていた彼女のこと。大切につないでいたはずの絆が突然寸断されてしまったわけだし、無理もないわ。

 だけどもう、なにがあっても大丈夫。私が絶対に守るから、怖がる必要なんてない。

「ずっと……そばに、いるから、ね」

 喘ぎながら言葉をかけると、ガクくんが唇を真一文字に結んだ。その瞳は潤んでいるように見える。

 大丈夫、大丈夫。全部受け止める。あなたの寂しさも不安もワガママも、私が全部受け止めて、受け入れるから。
 そう思いながら、彼の頬をゆっくり撫でた。

「彩女、さん……」

 ガクくんが倒れ込んできた。

「どこにも行かないで。ずっと僕のそばにいて。それ以上、なにも望まないから」

 まるで小さな子どものように、すがりついてくる。その背中を撫でながら、私は何度も頷いた。
< 218 / 278 >

この作品をシェア

pagetop