ワケありニートな年下ワンコを飼いました
 彼が待っているのは、父親からの連絡だった。

 3月の頭くらいにガクくんから「会って話したい」と打診したものの、お父様はとても多忙だったみたいで、時間ができたら連絡するとだけ言われたそう。

「もう1か月半ですよ。忘れているんですかねぇ。それとも、もう僕とは話をしたくないのかな」
「そんな寂しい顔をしないで」

 頬を撫でると、ガクくんは甘えるように肩を寄せてきた。

「彩女さんって、その場しのぎをしませんよね。こういうとき、大体の人が『そんなことないよ』なんて言うでしょ。でも彩女さんは、根拠のない憶測で慰めたりしない」
「仕事柄、根拠は大切にしているから」
「でしょうねぇ。かといって正論で殴るわけでもなく、こうして寄り添ってくれる。バランスがいい人だなって思います」

 確かに、仕事ではバランスがいいとか器用とか言われる。それなのにどうして、プライベートではポンコツになってしまうのかしら……我ながら、悲しいわ。

「僕はね、どちらかというと情緒のほうに振れてしまうんです。常に論理的な父親とは正反対」
「ガクくん、いつも冷静じゃない」
「そう見せているだけですよ。自分の性格を理解しているから」

 この若さで自分を客観視できるのは、すごいと思う。こういう視野の広さが、小説にも活かされているんだろうな。
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