ワケありニートな年下ワンコを飼いました
 ガクくんの小説「たそがれの月」は、とても繊細な恋愛小説だった。
 取り柄がなにもないと悩む女の子と、吃音(きつおん)症に悩む内気な男の子。ふたりの大学生を取り巻く人間ドラマが描かれている。

 人物描写が丁寧だし、心の機微の描き方も秀逸。この小説を読んだら、きっとお父様もガクくんを認めてくれると思うんだけど。そう簡単にはいかないのかしら。

「僕は行動原理が感情優先になりがちだから、父からすれば理解できないんだと思います」
「そっか……親子でも別の人間だから、理解できない部分があるのも仕方ないとは思うけど」
「やっぱり、分かり合えないのかなぁ」
 
 分かり合う……って、どういうことだろう。ガクくんの言葉を聞いて、ふと考えた。

 理解するのと分かり合うのは違う。分かり合うって、ただ理解するだけじゃなくて、想いに共感することなんじゃないかな。

 私と両親は、分かり合えている? 理解してくれているのは間違いないけれど、やっぱり価値観の違いはあるし……そう考えると、正反対の人間が分かり合うのって難しいわよね。

「ねぇ。ガクくんは、お父様にどうしてほしいの?」
「え?」
「小説家としての活動を認めて、応援してほしいの?」
「そう……ですね……いや、どうだろう」

 ガクくんは、両手に持ったマグカップへ視線を落とした。
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