ワケありニートな年下ワンコを飼いました
 彼との生活を通じて感じたのは、そのままの自分でいられる場所の大切さ。
 仕事で背伸びばかりしている私にとって、なにも気負わず一緒にいられる人がそばにいることは、とても大きかった。

 ガクくんにとって、私もそういう存在でありたい。虚勢を張ることなく、甘えたいときに甘えられる人に。

「お父さんには、いまの僕を見てもらえたら十分です」
「そうね」
「実家に戻るつもりはないけど……でも、また家族で食事ができるようになりたいです」
「うん」
「弟たちとも、遊んであげたい」
「……うん」

 ガクくんのことだから、きっと可愛がっていたんだろうな。彼自身は複雑な感情があるにしても、弟さんと妹さんには関係のないことだもの。

 家族みんなが笑顔で笑い合える日がきますように。バラバラだった心が、ひとつになりますように。
 うとうとしはじめたガクくんの頭を撫で続けながら、心から願った。

 その日以来、ガクくんはあまりスマホを気にしなくなった。いい意味で吹っ切れたのだと思う。
 
 以前よりパソコンに向かう時間が増えたし、たまに六本木の出版社へ出向いて、担当者と打ち合わせをしている。どうやら本の売れ行きが上々らしく、3巻目の刊行や別の小説の執筆も開始するみたい。
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