ワケありニートな年下ワンコを飼いました
「ダメですか?」

 懇願するように見つめられると、胸の奥が疼く。あぁ、やっぱり頭を撫でたい。

 いやいや、だからって簡単に承諾できないわ。漫画じゃないんだから。キッパリ断らなくちゃ。

「あのね、ガクくん」
「僕、家事は得意なんですよ。掃除も洗濯も。特に料理は大好きです」
「でも」
「彩女さん、家事が苦手なんでしょ? この段ボールの山もそうだし、洗面所とかの物の置き方が、なんだか雑だったし。キッチンだって、使用感ゼロじゃないですか」

 見られてしまった。仕事や勉強にエネルギーを全振りしすぎていて、それ以外のことをおざなりにしている私の生活を。誰も知らない、私のずぼらな姿を。スッピンを見られるより辛いわ……。

「お仕事忙しそうだし、僕が家のことをやれば、めちゃくちゃ助かるでしょ?」
「そう、だけど……」

 つい流されてしまいそうになり、私は慌てて自分の意思を引き戻そうと、首を横に振った。

「そもそも、どうして家がないの? ご実家は近いんでしょう」
「え、どうして知っているんですか?」
「以前、マスターが言っていたのよ。神奈川にお兄さんがいるって」
「あ、涼介さんに聞いたんですか。川崎なので、すぐ近くですね。でも父には追い出されました。就職するまで、帰ってくるなって」

 だから帰る場所がないのね。まぁ、働きもせずにフラフラしていたら……私の父親も、きっと家からたたき出すだろうな。厳格な人だし。
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