ワケありニートな年下ワンコを飼いました
「雅空が、料理を作って出しているのか?」

 テーブル席でピザを食べているお客さんを一瞥して、お父様が言った。

「うん。最初はオーダーを運ぶだけだったけど……やってみないかって、涼介さんが言ってくれて」
「ガクの料理の腕は、兄さんも知っているでしょ。好きなことを任せるほうが、やる気も出るだろと思ってね」
「好きなことか……」

 呟いて、お父様が俯く。

 ……ついつい一緒にお店へ入ってしまったけれど、たまたま居合わせてしまっただけの私が、この場にいていいのかな。いまさらながら思った。

 席を外したほうがいいのか考えていると、マスターと視線が合う。

「彩女さん、なにを飲みますか? お食事前なので、軽めのものにしましょうか」

 いつもの柔らかい笑顔。私の考えていることなんてお見通しなのね。やっぱりマスターって、できた人だわ。

「じゃあ、ロゼをいただきます」
「分かりました。兄さんは?」
「同じもので」

 普段通り落ち着いているマスターの横で、ガクくんはまだそわそわした様子だった。頭の中で、なにをどう話したらいいのか考えているのかもしれない。

 一度大反対されて家出状態になっているわけだし、いざお父様を目の前にすると、いろいろ不安が襲ってくるのかな。
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