ワケありニートな年下ワンコを飼いました
「最近のガクは、いつもあんな感じだよ。彩女さんとお付き合いをはじめてから、いきいきしているから。全部、彩女さんのおかげです」
「いえ、そんなことは」
「上條さんほどの方であれば、もっとつり合う男性がいるのでは?」

 ……つり合い? お父様が言う「私につり合う男性」って、どういう人のことを指すんだろう。
 
 名刺をお渡ししたときにも感じたけれど……財務官僚として働くお父様にとって「どこの組織に属していて、どういう立場であるか」ということは、他人を評価する軸として、とても重要なのかもしれない。
 
 だからこそ、自分の息子が無名の作家なんて弱い立場になることが、心配で仕方ないのかな。

「つり合うとは……社会的地位がある男性、という意味でしょうか?」

 私が尋ねると、お父様は手元のロゼワインに視線を落としたまま、小さく頷いた。

「周りには、立派な仕事をされている男性が大勢いらっしゃるでしょう。それなのに、なぜ息子のようになにも持たない人間を選ばれたのかと」
「兄さん」
「いいんです、マスター」

 咎めるマスターを手で制して、私はお父様のほうへ向き直った。

 遠慮せずに、結構はっきりと物申す方なのね。そのあたりは、やっぱりガクくんもお父様の血を引いている。そう思うと、少し胸があたたかくなった。
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