ワケありニートな年下ワンコを飼いました
「あ、お母さん? うん、家に着いたよ。彩女さんがすごく喜んでくれて、お母さんにお礼が言いたいって。じゃあ、代わるね」

 心の準備が整う前に、スマホを差し出されてしまった。少し緊張するけれど、大人としてしっかりご挨拶しなくちゃ。
 聞こえないように軽く咳ばらいをして、電話を代わった。
 
「初めまして、上條彩女と申します」
「初めまして、雅空の母です。主人と雅空から、お話は伺っています」

 とても明るくて、かわいらしい声だわ。涼介さんと同い年なんだっけ。

「美味しそうなお菓子をたくさんいただきまして、本当にありがとうございます」
「とんでもない! 雅空がとてもお世話になっていますし、お返しにもなっていませんが……今度、ぜひうちにお越しくださいね」
「はい。そのとき、改めてご挨拶させていただきます」
「楽しみにしていますね。どうか、雅空をよろしくお願いいたします」

 なんだろう。お母様がガクくんの名前を呼ぶだけで、心が温かくなる。
 悠くんと莉麻ちゃんが小さいころは余裕がなかったにしても、実子と変わらない愛情を注いでいるのが伝わってきた。

「それじゃ、お母さん。今度は彩女さんと一緒に帰るからね」

 ガクくんに電話を戻すと、心底嬉しそうな顔でそう言った。
< 266 / 278 >

この作品をシェア

pagetop