ワケありニートな年下ワンコを飼いました
 どれだけ年齢や経験を重ねても、親や周りの人たちの想いを素直に受け取れないのなら、まだまだ半人前。自分だけで築き上げてきたものなんて、なにひとつないんだもの。

 私が社会人になったばかりのころは、全部ひとりだけでなんとかしようと思っていた。考えてみたら、かなり傲慢よね。どれだけ自分の力を過信していたのかしら。

 周りのサポートがあるからこそ、自分を活かしてもらえる。それは仕事だけでなく家族も同じなのだと、今回のことを通じて学んだ。

「さて。ちょっと荷物を整理するので、彩女さんも手伝ってくださーい」

 スーツケースのキャスターを丁寧に拭いたあと、ガクくんが言った。

「僕の言う通りにしてくださいね。ポンコツさんなんだから」
「はーい」

 こういういつものやりとりが、なによりも尊く感じる。

 考えてみれば、彼が家を飛び出さなけば、こうして知り合うことはなかったのよね。涼介さんがMISTEROを開店して、私がこのマンションを買って、たまたまお店へ足を運んで。たくさんの偶然が重なったから、この出会いがあった。なんだか、とても不思議。
 
「ひと晩僕がいなかっただけで、どうしてこんなに散らかるんですかぁ?」

 ひとりで感慨にふけっていると、本と洋服が散らかった寝室の惨状を見て、ガクくんがため息をついた。
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