ワケありニートな年下ワンコを飼いました
「ガクくんは、夕方からお仕事頑張ってね」
「面倒くさいんですけどねー」
「ふふ、サボっちゃダメよ」
「はぁい。彩女さんも、頑張ってくださいね」
「ありがとう。じゃあね」

 電話を切って顔を上げると、自分のニヤけた表情が窓ガラスに映っていた。いけない、いけない。引き締めなくちゃ。

 ガクくんと話すのは、とても楽しい。だから自然に頬が緩んでしまう。
 恋のような舞い上がる気持ちではない。ただただ、胸がじんわりと温まる。まさしく癒しと安らぎ、という感じ。

 ほんの少しの時間だったけれど、ガクくんとの会話でエネルギー充電完了。そのおかげか、午後は妙に仕事が捗った。ガクくんパワーおそるべし。

 余裕をもって週明けのタスクを確認してから会社のエントランスに降りると、すでに凛子と凌也が待っていた。

「お、上條リーダー! お疲れ様でーっす」

 凌也が軽い調子で言う。30代になっても、全然変わらないわね。清潔感があって爽やかな見た目だから、口を開かなければモテるんだけど。

「彩女、お疲れさま。お店、勝手に予約しちゃったけど、いいよね?」
「うん、凛子のチョイスなら間違いないし。ありがとう」
「さすが、凛子さまはシゴデキだよなぁ~」
「あのね。あんたも、たまには気を利かせて、お店探しくらいしなさいよね」

 この雰囲気、やっぱり落ち着くな。
 新人時代の苦しさを共有してきたし、アメリカ留学中も、ふたりとは頻繁に連絡を取っていた。
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