ワケありニートな年下ワンコを飼いました
 でも、マスターが心配するのは当たり前よね。ガクくんの保護者みたいなものだろうし。信頼していないわけではなくて、きっと親のような気持ちがあるんだと思う。

「親か……」

 無意識に声に出してしまったようで、マスターが目を瞬かせる。

「あ、ごめんなさい。つい、ひとり言が出ちゃった」
「珍しいですね。なにか、お悩みですか?」

 いつもは立ち入ったことを訊いてこないのに、話を聞いてほしいときには、ちゃんとオープンにしてくれるのよね。

 ガクくんが大人しく手伝いをしているのも、きっとそんなマスターを心から信頼していて、大好きだからなんだろうな。

「なんとなく、浮かない表情をされている気がして。ガクが原因じゃないかと……」
「いえ、違うんです。実は、さっきまで一緒に食事していた同僚と、両親の話になったんですよ」
「ご両親ですか。確か、三鷹にお住まいでしたっけ」
「ええ。実はマンションを買ったのは事後報告だったんですけど、そのときに言われたんです。独身の女が家を買うなんてって」

 女の子だから。女の子なのに。昔からいつも、そう言われてきた。

 女の子は、勉強やスポーツを頑張らなくていい。学歴も高くないほうがいい。なによりも大切なのは、愛嬌と家事力。そして素敵な男性に嫁いで、その人が仕事に集中できるように家を守る。

 いつの時代よ、とツッコミを入れたくなるけれど、それが両親にとっての「普通の幸せ」だった。
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