ワケありニートな年下ワンコを飼いました
 ガクくんと家族のことを聞き出すつもりはない。だけど私は、勝手に彼と自分を重ねている。

 一緒に暮らすなんて大胆なことをしてしまったのも、ガクくんが私と同じような葛藤を抱えているように見えて、どうしても放っておけなかったから。

 結局私は、思考が自分中心なのかもしれない。また両親の顔が浮かんで、胸が痛んだ。

「……本当は、両親が望む方向に進まなかったことへの負い目もあって。兄が結婚して子どもを授かったときは、正直ホッとしたんですよ。両親に孫の顔を見せる役割を、兄が果たしてくれたから」
「実は僕も、同じことを思っていましたよ」

 少しガクくんの様子を気にしながら、マスターが言った。

「兄とは8歳離れているんですけど、僕が高校を卒業するころに結婚したんです。それからガクが生まれて、親戚一同、大喜びで。長男の務めを果たした、なんて言う人もいました」
「うちの親戚にもいましたね。同じようなことを言っていた人が」
「だけど自分も、少なからずそう思っていたことに気がついたんですよ。兄が両親に孫の顔を見せてくれたから、僕はしばらく自由にできるかなって」

 なんだ。少しホッとしてしまった。そんな風に考えるのは、自分だけじゃなかったんだって。

 両親のことは好きだし、尊敬している。孫の顔が見たいと思うのは親として当然の感情だし、そこは理解しているつもり。自分のやりたいことや、いろいろなものと引き換えに、私たちを育ててくれたんだもの。
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