ワケありニートな年下ワンコを飼いました
 それなのに私は、親の想いを知りながらも、それを叶える役割をすべて兄に押しつけてしまった。そのことを、ずっと後ろめたく感じている。

 女らしくなれなくて、ごめんなさい。子どもは欲しくないなんて思って、ごめんなさい。結婚願望がなくて、ごめんなさい。

 両親の顔を見るたびに、心の中で懺悔をしていた。

「……私も、自由にさせてもらっていますけど。でも自由って、難しいですよね」
「そうですね。家族を無視して好き勝手やるのがいいとは思わないし、家族の想いを優先して自分の気持ちを犠牲にするのも違う。話し合って、お互い歩み寄ることができればいいんでしょうね。まぁ僕は、それをしなかったんですけど」

 マスターが苦笑する。その言葉には、いろいろな想いがこもっているように感じた。ガクくんにも、きっと聞こえているわよね。

 身近な家族が、一番難しい。それはみんな同じなのかもしれないな。

「だけど、マスターにももうすぐお子様が産まれるし、ご両親はお喜びでしょう?」
「ようやくかって、言われましたけど。別に僕は、結婚したくないわけではなかったんですけどね。40過ぎてからでいいと思っていただけで」
「私は結婚自体したくないから。余計、親に申し訳ない気がします」

 マスターは優しく笑って、空になったウイスキーの代わりに、お水を出してくれた。
 慰めの言葉やアドバイスが欲しいわけじゃない。そういう私の気持ちを、よく分かってくれているような気がした。
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