ワケありニートな年下ワンコを飼いました
「はぁ、美味しい……」
「よかったぁ。ほかにも買ってきているから、疲れていたりイライラしたりするときは言ってくださいね。そのときの調子に合ったものを淹れますから」

 私が飲むのを確認してから、ようやく自分もカモミールティーを口にするガクくん。この子はいつも、私を優先させるのよね。

「私も、ガクみたいだったらな」

 思わず、そう呟いてしまった。

「料理上手で、掃除も洗濯も完璧で。気遣いができるし、人のために尽くせるし……家庭的で、羨ましい」

 口にした直後、自虐的な物言いになってしまったことを後悔する。ガクくんの前で、少し気を抜きすぎかもしれない。

 なんだかばつが悪くなって、カモミールティーを一気に飲んだ。
 
「……僕が尽くすのは、彩女さんだからですよ」

 ガクくんがカップをテーブルに置いて、私のほうに向き直る。

「危なっかしいから、放っておけないでしょ。不器用なくせに、すっごく真面目で一生懸命で。そういう彩女さんが好きだから、尽くしたいって思うんです」

 私を真っすぐ見つめて、とても穏やかな口調で言われた。やっぱりガクくんは、マスターに似ているな。同じ血筋だものね。

「不器用なのに、仕事はバリバリできるじゃないですか。大勢の人を引っ張っていくリーダーシップもあるし、周りをよく見ている。だけど余計なことを言ったり詮索したりしないし、そういうところが本当にすごいなぁって尊敬しています」

 驚いた。ガクくんが、そんなふうに思っていたなんて。
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