ワケありニートな年下ワンコを飼いました
 彼にとって私は「ポンコツさん」で、生活力皆無な世話のかかるおばさん。甲斐甲斐しく動いてくれるのも、自分の居場所を守るためだと思っていた。

 出会って1週間しか経っていないけれど、彼はちゃんと私自身を見てくれていたのね。

「ありがとう」

 ポカポカしてきたのは、きっとカモミールティーの効果だけじゃない。なんだかとても幸せな気持ちになって、素直にそんな言葉が出た。

 ガクくんと一緒にいたら、ダメな自分も好きになれそうな気がする。ポンコツなんて言ってからかうけれど、その言葉には温かさを感じるから。

「この歳になると、褒められる機会って少ないから……なんだか、すごく嬉しい」

 ふいにガクくんの顔が近づいてきて、柔らかい感触が唇に触れる。驚いて、思わず目を見開いた。
 
「あ、ごめんなさい」

 我に返ったように、ガクくんが慌てて体を離した。え、いま謝ったの?

「ど、どうして謝るの?」
「嫌がることはしないって、約束したのに……彩女さんがかわいくて、つい」

 また三十路の女に、かわいいとか……いやいや、そうじゃないわ。嫌がることって、ガクくんとのキス?

 そんなの、いまさらじゃない。キスなんて出会ったその日にしたのに。それが嫌だったのなら、一緒に暮らすわけないでしょう。
 
「……嫌なわけ、ない」

 私が言うと、ガクくんは目を瞬かせた。
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