ワケありニートな年下ワンコを飼いました
「……もう一度、してもいいんですか?」

 黙って頷くと、口の中にまた、カモミールティーの甘い味が広がった。体を抱き寄せられて、さっきよりも深く、唇を重ねる。
 あぁ、なんだか不思議な気持ち。とても温かくて落ち着く。

「彩女さん。今日は、一緒に寝たいです」

 どこかで期待していたその言葉に、私はもう一度頷いた。

 1週間前のあの夜の感覚を、私はまだ、はっきりと覚えている。だから、溺れてしまうのが怖かった。
 でも、もう溺れていい。溺れてしまいたいと思った。

「寒くないですか?」

 ベッドルームへ行くと、ガクくんがエアコンの設定温度を確認した。こんなときでも、私を気遣ってくれるのね。

「大丈夫よ」
「えっと、乾燥しているから、加湿器もつけますね」
「ありがとう」

 ……あら? なんだか少し、様子が変? どことなく、そわそわしているというか。

 ベッドサイドの加湿器をオンにしたあと、ガクくんは羽織っていたカーディガンを脱いで、ベッドの上でなぜか正座をした。
 
「あ、あの……前に言いましたけど、僕、初めてなので」
「う、うん」

 つられて、私も正座で向き合う。

「その、実はちょっと、緊張しているんです。だから……満足させられなかったら、ごめんなさい」

 そう言って、ガクくんは頭を下げた。

 ちょっと待って。それは反則でしょう。
 この前は、自信満々といった態度だったくせに。いざとなったら「緊張している」だなんて、どれだけかわいいのよ。
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