ワケありニートな年下ワンコを飼いました
「満足だなんて。そんなに、難しく考えなくていいのよ」
「さっきも言いましたけど、僕は彩女さんだから尽くすんです」

 ガクくんが膝の上でギュッと拳を握る。やっぱり彼の瞳は真っすぐで、とても綺麗。

「尽くしてあげようなんて、おこがましいことは思っていません。でも、彩女さんに喜んでもらうことが、僕自身の喜びでもあるなって感じたから……自分勝手かもしれないけど、僕はあなたを満たしたいんです」

 そのいじらしい姿に、私は思わずガクくんを抱きしめていた。

 ずっとずっと触れたかった、柔らかい髪に手を伸ばす。体の奥からじわりと熱が広がって、ハーブティーよりもリラックス効果があると思った。

「こうすると、温かいでしょう?」
「……はい、すごく」
「これだけで満たされるのよ。特別なことなんて、なにもいらないの」

 肌が触れ合うだけで、心地いい。そこには小手先のテクニックなんか関係なくて、ただお互いを思いやる気持ちがあれば十分。
 
 しばらく抱き合って、どちらからともなくキスをした。

 不安とか後ろめたさとか、そんな雑念はまったくない。ガクくんに触れたい、触れられたいという気持ちがあるだけ。

 本来なら、もっとドキドキするものなのかしら。妙に安心するというか、まるでウールの毛布に包まれているような感覚。
 あぁ、やっぱり私は、これを求めていたんだ。優しくて柔らかくて温かい、ガクくんの体温を。
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