nonsense magic
「……わたし下にいますから、なにかあったら声かけてください」
そのまま立ち上がろうと、腰をあげたら。
「っ、……?」
ぎゅ、と控えめな力で手を掴まれて、引き止められる。
思わず目をぱちぱちと瞬かせてみせるけど、静かに目を伏せたままなんの言葉も発さない。やわく握られた指先から熱が伝って、慣れない感触に戸惑ってしまう。
「……ゆび、綺麗ですね」
なんて言葉をかけたらいいのかも分からなくて、脈絡のないセリフを吐いてしまう。急に変なことを言ってら気持ち悪いって思われたかな、……でも、お世辞でもなんでもなく、白く骨ばった手のひらは私のものをぜんぶ覆ってしまうくらい大きくて、爪先もしなやかで、綺麗で。
指先まで美しいなんて、天は二物を与えず、なんて嘘かもしれないと思ってしまうほどに、纏う全てがうつくしい彼は、ほんの少し絡んだ指先に力を込めて、伏し目がちに見上げる。
「、おまえの手は、……ぬくいね」
「……あなたの方が熱いですよ」
微かな吐息音だけが響く部屋で、何秒か見つめ合う。
真っ直ぐと見上げてくる瞳が、そらすことを許してくれない。
その瞬間、見上げてくる柔らかいカーブを描いた瞳が、苦しそうに目尻を寄せて、きゅ、とちいさくシワを寄せていることに気づく。
.……すごくしんどそうな表情。ずくり、と疼く胸は、苦しそうな彼に同情でもしているのだろうか。
なんとなく、このひとから離れてはいけないような気がして、……恐る恐るベッドの縁に座ると、そのひとは微かに口元を緩めた。
また、反射的に胸が鳴ってしまう。
……名前すら知らないひとなのに。
————————繋がれたままの右手
なぜかくすりゆびだけを絡めて、よわく、でも確かな力で握られる。
「(……ほんとだ。あったかい、)」
ひとの温もりにふれるのは、とても久しぶり。
絡められたくすりゆびに力をこめる。
よわく握り返してくる指先の熱は────
とても、心地いいとおもった。