nonsense magic
「きりくんは──────」
数々の疑問がぽろりとこぼれそうになって、あわてて口をつぐむ。
……このひとには踏み込んではいけない、というか、踏み込む権利なんてあるわけない。
「なに?」
「き、…き、」
「き?」
「……''桐"って綺麗な響きで、その、……似合うな、って」
……脈絡がないのはわたしも同じ。
でも、これはお世辞とかじゃなくて、本心。
"桐"というどこか中世的で柔らかい響きは、不思議な雰囲気を纏う、どこか掴めない彼にぴったりだとおもった。
「"はやみきり"って、響きアンバランスじゃない?」
「え、そう……かな、」
どこか冷たさを滲ませた口調で、吐き捨てるような言い方。
……自分の名前、好きじゃないのかな。
「…でも、おれも、」
そんなわたしの思考を覆すみたいに、柔らかい声が耳をくすぐった。
なにかを掬い取るみたいに、やさしく目元を細めて。
「桐って名前は、けっこう好き」
さっきまでの冷たいカオとは、全くちがう。
やさしい声と、柔い笑み。
「っ、」
ぎゅ、と心臓を緩く掴まれたような感覚のあと、ばくん、となにかが弾けるみたいに揺れる。
たくさんの顔を持っているこのひとは、名前しか知らないひと。
……なのに、こんな。