nonsense magic
「……ね、聞こえてる?」
振り向こうと視線をあげた瞬間、息が止まった。
─────⋯⋯きれい。
月の光に照らされる黒髪は、やわらかそうなツーブロック。
長めの前髪の隙間から見えるシルバーのピアスと、首から下げられるネックレス。
一見軽そうな見た目──────だけど、洗練された雰囲気とあまりにも綺麗な顔立ちから、品の良い印象さえ受ける。
「(こんな綺麗な人、初めて⋯⋯ )
今の状況も忘れて、ただそのひとを見上げる。
一歩、わたしに近づいたそのひとは、こそりと内緒話をするみたいに告げた。
「、大丈夫?」
「………ぁ、はい」
「……こういうの初めて?」
初めて……って、こういう風に絡まれるのがということ?
学校帰りにふざけて声をかけられたことは何度かあるけれど、こんな時間帯に、しかもこんなにもしつこく絡まれたことは初めてだ。