冷徹無慈悲なCEOは新妻にご執心~この度、夫婦になりました。ただし、お仕事として!~
「お義母さまが言っていたわ。櫂さんはリベタス発売前の話題作りに結婚しただけだろうって。簡単に落とせて、都合よく扱える女。そういう相手を探して、ちょうどよかったのがあなただったんじゃない?」
咲穂はギクリとした。双方合意のうえでのビジネス婚。そこまでは見抜かれていないようだが、塔子の推測はかなり真実に近いところを言い当てている。
「このままじゃ咲穂さんがかわいそうだから、教えてあげましょうか」
梨花の声はいやに甘ったるく、絡みつくようだ。
「櫂さんには?忘れられない本命〟がいるのよ」
聞く必要なんてない。すぐにこの場を立ち去るべきだとわかっているのに、咲穂は一歩も動けず梨花の声を拾ってしまう。
「ほら、この人」
梨花はスマホを操作して、誰かの写真を咲穂に見せつけた。藤色の着物姿の清楚な女性が大きな日本画の前でほほ笑んでいる。
「日本画家の滝川翠さん。滝川商事のご令嬢にして、海外でも評価されている新進気鋭の画家よ。幼い頃からの櫂さんの許嫁で婚約直前までいったんだけど、櫂さんが振られてしまったらしいわ」
(許婚? 婚約?)
そんな話は櫂からまったく聞いたことがない。咲穂は混乱して、事態をうまくのみ込めなかった。
「櫂さん、ああ見えて一途なのよね。言い寄る女性に『翠を忘れられないから』と言っているのを私も聞いたことがあるわ」
『翠を忘れられないから』
咲穂の脳内で、その台詞は櫂の声で再生された。激しくなる動悸を、自分ではどうすることもできない。
咲穂はギクリとした。双方合意のうえでのビジネス婚。そこまでは見抜かれていないようだが、塔子の推測はかなり真実に近いところを言い当てている。
「このままじゃ咲穂さんがかわいそうだから、教えてあげましょうか」
梨花の声はいやに甘ったるく、絡みつくようだ。
「櫂さんには?忘れられない本命〟がいるのよ」
聞く必要なんてない。すぐにこの場を立ち去るべきだとわかっているのに、咲穂は一歩も動けず梨花の声を拾ってしまう。
「ほら、この人」
梨花はスマホを操作して、誰かの写真を咲穂に見せつけた。藤色の着物姿の清楚な女性が大きな日本画の前でほほ笑んでいる。
「日本画家の滝川翠さん。滝川商事のご令嬢にして、海外でも評価されている新進気鋭の画家よ。幼い頃からの櫂さんの許嫁で婚約直前までいったんだけど、櫂さんが振られてしまったらしいわ」
(許婚? 婚約?)
そんな話は櫂からまったく聞いたことがない。咲穂は混乱して、事態をうまくのみ込めなかった。
「櫂さん、ああ見えて一途なのよね。言い寄る女性に『翠を忘れられないから』と言っているのを私も聞いたことがあるわ」
『翠を忘れられないから』
咲穂の脳内で、その台詞は櫂の声で再生された。激しくなる動悸を、自分ではどうすることもできない。