冷徹無慈悲なCEOは新妻にご執心~この度、夫婦になりました。ただし、お仕事として!~
 咲穂が逡巡している間に櫂はケースを開け、指輪を取って咲穂のもとに戻ってきた。

「俺は……つけてほしいと思ってる」

 櫂は迷いなく咲穂の左手を取り、指輪をはめた。

(……左手の……薬指だ……)

 トクン、トクンと音を立てて、咲穂の鼓動はそのスピードを増していく。

(櫂さんはずるい。今、こんなことされたら……私はまた期待しちゃうのに)

 期待……してもいいのだろうか?
 咲穂の薬指で輝くダイヤを見て、櫂は甘やかに目を細める。

「ダイヤのネックレスもあったほうがいいな。亡くなった母の形見があるから、それを使うといい。髪はこのドレスならアップが合いそうだが、咲穂はどうしたい?」
「えっと、今夜は……櫂さんにお任せで!」

 大事なリベタスのパーティーだからこそ、櫂の手でシンデレラにしてほしい。そんなふうに思った。

(櫂さんの前だと……これまで知らなかった感情がどんどん湧いてくる)

「了解」

 彼は嬉しそうに笑って、咲穂を美しく変身させてくれる。彼の優しい手が、咲穂の髪に、肩に、頬に触れる。泣きたくなるほど幸せで、この時間が永遠に続けばいいのに……そんなふうに思った。

「よし。最後はリップだな。どの色がいい?」
「あっ、リップは……」

 咲穂はメイクポーチに手を伸ばし、一本の口紅を迷わずに選び取った。

「これでお願いします」

 マリエルジュのクリアレッドの口紅を彼に渡す。

「櫂さんに初めてもらったプレゼント。私に自信を与えてくれる、宝物なので」
「俺も、これがいいと思ってた」

 ふっと笑って、彼は咲穂の唇に紅を引く。
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