第一幕、御三家の桜姫


「聞いたよ、遼。桜坂と喧嘩になったんだってね? やる気あんの?」

「……やる気はあるっての」

「だったらどんなに桜坂がうざくても我慢くらいしろ」

「あのすみません、私はうざいこと確定なんですか……?」

「こんな馬鹿馬鹿しいことやってられるかって思うんだったら最初からやらなきゃいい。蝶乃の見張りでもよかったんだからな?」

「だからそれは……」

「あと二日間もあるのにどうするつもりなんだ? 早々にコンテスト放棄して退学覚悟で生徒会室ガサ入れするか役員を脅迫するほうがいいかもな」

「そういうわけにはいかないからこうやってるんだろ……」

「だったら真面目にやれ」


 冷ややかな松隆くんの言葉に桐椰くんは何も返事をしなかったけれど、表情を見れば反省しているのは分かった。

 松隆くんは溜息を吐きながらスマホを置く。


「分かったなら、俺は何度も同じことを繰り返し言うつもりはない。明日以降、心を入れ替えて競技に臨め」

「はい……すみませんでした、リーダー……」


 とてもじゃないけど、同い年の男の子に怒られている気がしなかった。呼び名のとおり、まさしくリーダーによるお説教だった。


「で、俺からの話は以上。駿哉、なにか言っときたいことある?」

「いや特には──というのは俺による評価だから不適切だったな。確認した学内の状況を一応報告しておくと、指名役員が役員の地位を理由に一般生徒の展示物を破壊する等だが、いつも通りの振る舞いが文化祭という要素を取り入れているに過ぎない。したがって俺は特筆すべき点はなしと判断した。したがって俺からの話はない」


 まるで報告書のような淡々とした説明だった。御三家の目的は透冶くんの死の真相、それ以外のこと――一般生徒がどんな目に遭おうと知ったことではない。そう聞こえてきそうな内容だった。

 そしてそれは松隆くんも桐椰くんも同じだ。松隆くんは「あ、そ。じゃいつも通りだね」と頷いただけだし、桐椰くんも「ま、文化祭なんて生徒会役員が威張るための舞台だしな」と無関心な返事をするだけだった。

 そんな風に、割り切れるものなのだろうか。この学校に一年間いれば、一般生徒が生徒会役員に(しいた)げられるのは仕方のないことだ、と。


「……三人ってさ。三人以外の友達、いないの?」


 三人分の目が、急になんだと言わんばかりにこちらを見る。だって、御三家(おたがい)以外の友達がいるのなら少しは心配してもいいはずだ。それをしないということは、おそらくいないのだろうけど……、月影くんはともかく、松隆くんと桐椰くんに他に友達がいないのは……少し、不思議だった。


「別に、必要があれば話す人はいるけど。つるんでる人は特にいないよ」


 なんでもなさそうな松隆くんの返事は、きっと二人にも当てはまることだ。

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