第一幕、御三家の桜姫


 やっぱり、この三人の連帯感は奇妙通りこして――うすら寒い。幼馴染の死から離れようとしない、離れさせない、それは絆じゃなくて呪縛だ。

 そんな私の反応を松隆くんは嗤った。


「知らなかったんだ? でもそうだよね。透冶が死んだことすら誰も知らないのに、死んだ場所なんて知ってるはずがない」

「……見つけたのは……誰、だったの……」

「俺だよ」

「──え」


 返事をしたのは桐椰くんだ。くたっと、疲れたようにソファの背に背中を預けて足を投げ出す形で座り直して。その光景を思い出すように、その目の上を腕で覆っていた。


「……透冶の死体を見つけたのは俺。救急車呼んだのも、教師呼んだのも俺だ」

「……そう、だったん、だ……」


 ――そうか。桐椰くんが、透冶くんの名前が出るたびに松隆くんや月影くん以上に反応するのは、桐椰くんだけが真相に繋がる鍵を掴んでるからじゃない。桐椰くんが最初に死体を見てしまったからなんだ。それだというのに、まるで疑うように、その表情の意味を知りたがった私はなんて浅はかだったんだろう。その責め苦に喉を絞められ、息が詰まった。


「──……事故当時から第六の屋上は立ち入り禁止だったんだけど。そこに落ちてたものがある」

「……何?」


 桐椰くんから意識を逸らすためなのか、松隆くんが脈絡なく言葉を紡いだ。松隆くんに視線を戻せば、その親指が(えり)をぐっと押さえた。


「生徒会役員の徽章(きしょう)だ」


 生徒会役員が、一般役員とは違うことを示すため、権威の象徴のように身に着けている徽章。


「……だから生徒会役員が傍にいたんじゃないかってこと? でも……屋上に立ち入り禁止って建前みたいなもんでしょ? 現に透冶くんも屋上に入ってたわけだし。だったら生徒会役員が日常的に侵入してたって可能性も……」

「徽章が作られたのは透冶が死んだ後だ」


 私の推測を切って捨てるように、月影くんが口を挟んだ。


「更に刻まれていた期は、去年選出された役員のもの──つまりその徽章が作られたのは透冶が死ぬ直前の九月だ。加えて、今は俺達が鍵を持っているが、もともと第六校舎自体は閉鎖されていたんだ。そんなところの屋上に、わずか三ヶ月弱の間に、生徒会役員が頻繁(ひんぱん)に出入りし、挙句徽章を失くしたことに気付かないなどということが有り得るか?」


 皮肉たっぷりな言葉を投げた月影くんに賛同するように松隆くんは頷いた。
< 135 / 240 >

この作品をシェア

pagetop